アンテナショップを楽しむ遠山さん |
遠山さんは高校卒業後、公務員として働きながら大学に通うも中退。総務省で11年間、横浜市役所で21年間勤務し、娘の大学受験と母の介護をきっかけに職を離れた。母の介護に時間がかからなくなって余裕ができ、「いつか大学を卒業したい」という思いを持っていたことから、もう一度大学に行くことを決めた。「大学に行くなら、亡くなった父と同じ法政に」と大学選びには悩まなかった。
今年4月に2年生として編入学した遠山さん。「大学の先生は深く研究されているので、以前苦手だった教科でも面白くて視野が広がる」と大学の授業の楽しさを語る。
遠山さんは都市環境や地域形成を研究テーマとする石神隆教授のゼミに所属しており、小石川後楽園や北の丸公園などにフィールドワークに行くこともあるという。先日はゼミ生と協力して都内に出店しているアンテナショップを全て周り、「一緒に美味しいものを食べて楽しかった」と笑顔で話してくれた。
最初は「年が離れた学生と話が合うだろうか」と不安だったが、ゼミの雰囲気も良く、ゼミ生が「仲間だよ」と言ってくれたことが心の支えになっている。飲み会では就職活動から恋愛の話まで様々に語り合い、ゼミ生と心を通わせているようだ。「最近は『瓢箪坂』『鰻坂』といった、大学周辺の面白い坂の名前に興味がある」と好奇心溢れる表情を見せた。
そんな遠山さんの趣味は読書。通学電車の中で本を読む習慣があり、ふと大学生協書籍部で目にした「読書マラソン*1」に興味を持った。遠山さんは夏休みからの約3ヶ月間で31枚のコメントカードを提出した。その中でも一番おすすめの本は、法政大学キャリアデザイン学部教授である筒井美紀氏の「大学選びより100倍大切なこと」(ジャパンマシニスト社)。大学生活4年間での学びの大切さを分かりやすく説いていて、「私と娘の愛読書」と話してくれた。
遠山さんは夫、長女、母の4人暮らしで、長男は転勤で家を空けている。特に大学1年生の娘とは仲が良く、毎朝一緒に電車で通学したり、お互いのレポート課題の誤字脱字をチェックし合ったりするそうだ。成績発表の際、思った以上に評価が良かった遠山さんが喜んでいると、それ以上の成績を取った娘に「なんだ、お母さんチョロいじゃん」と茶化されたエピソードはなんとも微笑ましい。
また勉強に追われる試験期間中、夫は「ご飯のおかずがいつもより少ない」と冗談を言いながらも、家事を手伝ってくれたという。遠山さんは「家族の理解のおかげで大学に通えています」と家族への感謝の気持ちを露わにした。
授業に家事に忙しい遠山さんだが、彼女は今「ある夢」を叶えようと奮闘している。「ずっと心で大切に温めていた教師になるという夢を叶えるため、教職課程を履修しています。教員免許は取れるか分からないけれど、今やらないと絶対に後悔すると思ったんです。大学卒業後はフリースクールやサポート校などで、つまずいてしまった子どもを支える仕事がしたい」と力強く語った。夢を追いかけ、意欲的に学び続ける遠山さんの笑顔は眩しかった。(法政大学新聞2015年就活特集号 渡邉 彩花)
社会人へ学びの門戸開放
法政大学の社会人入試は文学部日本文学科、人間環境学部、キャリアデザイン学部で実施されている。遠山さんが所属する人間環境学部には、元銀行員や元消防士など、多様な職種経験を持った人が集まり、中には子育てを終えて大学に通い始めた人もいるという。昨年度の入学志願者はいずれも前年より微増の傾向だ。法政大学のスーパーグローバル構想には「社会人の学びなおし推進」が明記されており、社会人のキャリアアップ支援や少子化による学生減少に歯止めをかけるためにも、学びの門戸を広く開放していく必要がある。
*1:「読書マラソン」とは大学生活協同組合が実施する大学生活4年間で本を100冊以上読むことを目指す取り組み。本を一冊読むごとに、おすすめ度や感想などを記入する1枚のコメントカードを提出する。毎年行われる「全国読書マラソン・コメント大賞」では受賞者に図書カードのプレゼントが贈呈される。
法政大学新聞学会は、1924年(大正13年)に設立。1928年(昭和3年)に「法政大學新聞」の前身である「法政大学学友会報」の編集を始めました。以来、亡き小田切秀雄氏(のち文芸評論家・近代文学研究)ら多くの学生の手によって、戦争末期の一時期を除いて発行を続けています。2008年(平成20年)には、創刊80周年、通算1,000号発行を迎えました。
【Twitter】@hoseipress
【Facebook】https://www.facebook.com/hoseipress/
【Twitter】@hoseipress
【Facebook】https://www.facebook.com/hoseipress/
0 件のコメント:
コメントを投稿